コケシ愚行禄

 
 
第4回
 
                              文:コケシドール(G) 蹄沢由美子
 
 
 
 
 
≪ その名はマツウラ ≫
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
法制大学学館大ホールライブ後にベースが脱退が決定したコケシドール。
 
 
 
 
 
しかし前年と違いバンドに勢いがあったのか、新しいベースはすぐに見つかった。
 
その名はマツウラ。
 
 
 
 
 
ラビッツ、あぶらだこを愛聴し、性格はワイルドにしてひょうきん。
 
ステージ上での特出しも辞さず!という前宣伝。
 
そしてなんといっても19歳という年齢は、息切れしがちな中年パンクバンドには即戦力だ!
 
 
 
 
 
とメンバーは大歓迎ムード。
 
 
 
 
 
オリジナルベーシスト、ヒロ・ミヨダのラストライブの打ち上げでもマツウラは、
エログロ入り混じった熱いトークでメンバーをKO。
 
感動のあまり「今日からこれはお前のものだ!」とヒロが愛用のベースを手渡す一幕もあった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
そして初練習。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
バッグの中から大きなエフェクターを取り出すマツウラにそれは何か?と問うと、
 
「これはゆらゆら帝国やMAD3のエフェクターを作っている職人に特別に作らせた
ベース用のファズです!今日からコケシはサイケパンクです!」
 
うーむ、それもまた良し! しからばレッツゴー!
 
とまずは解剖室をブチかますと、、、
 
 
 
 
 
あり?
 
 
 
 
 
ベースがイマイチ聴こえない。
 
弾いてる? ボリューム上げてる? ちょっとベースだけ弾いてみ。
 
と言うと、アンプから流れてきたのは、
 
「ザザザ、ザザザザザ」
 
という砂嵐のような音。
 
 
 
 
 
いやまあ、そういうのは勿論アリなんだが、初回でもあるし
もうチョイ生に近い音をおじさん達に聴かせておくれよ。
 
とエフェクターを切って弾かせてみると......
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
全く弾けていない。
 
 
 
 
 
練習不足?
 
いやしかしこの程度の曲だしなあ、と見ていると、
 
4弦のやたらと下のほうを押さえ始めた。
 
なんだ?
 
これが奴のスタイルなのだろうか?
 
しかし......。
 
 
 
 
 
「そんな無理せず3弦で弾きなよ。」
 
「えっ!? 3弦でも同じ音が出るんですか!?」
 
 
 
 
 
「ちょっと待て!おまえベースって弾いたことあるのか!?」
 
「あ、ありませんよっ!!
なんですかっ、コケシドールってのはそんな下らない事にこだわるバンドだったんですか!?」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
その後、奴の姿を見たものはいない。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ひょっとしたら、天才だったのかもしれない。
 
 
 
 
 
     (次回最終回)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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